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「門倉紗夜じゃないですか?対象って彼女なんですか?」
思わず呟いた辻堂の声に、藤崎が反応する。
「辻堂、知ってるのか?」
「もちろんです。」
某国営放送の朝のドラマからCM、映画、と彼女の活躍の場は幅広い。
「お前、ファンか?」
そういう訳ではない。
嫌いではない。
どちらかと言うと、好感は持っているが。
「…というか、朝ドラの顔は常識ですよ。」
そんな言い方でごまかす。
「ヤバい。俺、そういう意味では本当に常識知らないんだよ。」
藤崎が慌てている。
いざ、となって知らないではまずい、と急に思ったようだ。
けど、そんなところもこの人らしい。
「チーフはいいんですよ。それで。」
表情が少しぬるい感じだったかもしれないが、本当に完璧なようでいて、常識を知らないのか?!と慌て出すとか、可愛いかよ!
そのままでいい、と言いたくなるではないか。
その後、門倉紗夜のマネージャーだと言う、城戸を紹介してもらった。
城戸は人懐こくて、人当たりの良さそうな人物だった。
警護を受けると伝えたところ、
「良かったぁ。もう、僕、どうしていいか、分かんなくて!」
と両手で握手でもしそうな雰囲気だ。
「後でお話し、伺えますか?」
「もちろんです!あ、紗夜ちゃんも紹介しますね。」
にこにこしていて、とても感じのいい人物である。
藤崎はそれに笑顔を返して、辻堂、と声をかける。
少し、離れたところに2人で向かった。
「はい。」
「手紙からすると、ベタ付きがいずれ必要だと思う。もう、明日からにでも。
警護も必要だけど、それだけではなくて、その人物の特定も出来そうなら、進めていきたい。」
先程までの表情とは全く違い、緊迫した雰囲気を纏った藤崎が、辻堂に声を低くして伝える。
「チーフのご指示に従いますよ。何かあってからでは遅いし、彼女は日本の宝です。」
藤崎は口元に手を当てて、少し考えるようだ。
「このまま、ついてもらってもいいか?今日の彼女の帰宅まで。」
ついにこの時が来たのだ。
辻堂は決意を込めて、深く頷いた。
「分かりました。」
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