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「それは…分かってます…。」
「城戸さん、犯人が捕まった時点で、契約については完了している。ご存知ですよね。それでも会いに来てくださって、僕らは嬉しかったですよ。」
見かねた藤崎が、そう口を挟んだ。
「藤崎さん、紗夜ちゃんは現場ごとで人が変わることに慣れています。
けれど、そんな風に寂しいなんて言ったことはほとんどありません。紗夜ちゃん、それはどうして?」
「現場とは違くて…、本当に素の私を見てくれたから…でしょうか。」
「そう…か…。紗夜ちゃん、責めているわけではないんだよ。どうして言ってくれなかったのかな?」
「城戸さんには怒られてしまうかも知れないって思ったんです。」
「どうして?」
「寂しかったのは本当なんです。皆さんに会いたかったのも。けど、辻堂さんに…会いたかったんです。」
城戸が辻堂を見た。
「なぜでしょうか?」
「お互いに惹かれていたからです。」
それには辻堂が答えた。
「何もしていないとおっしゃっていましたよね。」
今度は城戸の真剣な目が辻堂に向いていた。
「何もしていません。それは本当です。…いえ…違う…、何もしていないのは物理的なことだけです。多分、気持ちは通じ合ったはずです。」
もっと、そばにいたい。
もっと、知りたい。
もっと、一緒にいたい。
「何もしないと言ったのに…。」
ふう、と城戸はため息をつく。
「それで紗夜ちゃんはどうしたいの?」
「辻堂さんが好きです。この人のそばにいたいです。お付き合いもしてみたい。」
「辻堂さんは?」
「僕は紗夜さんを守ります。手放さずに。」
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