14.伝わる気持ち

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「さっきも言いましたけどね、紗夜ちゃんは本当に、何かを自分から欲しがらなかった。」 それは以前から城戸が気になっていた事だったのだ。 「執着心がないのかと思いましたよ。」 そう言って紗夜を見る城戸の目は優しい。 「けれどその紗夜ちゃんがどうしても欲しいという。僕としてはね、何をしてでも手に入れてあげたい。」 「城戸さん…」 そんな風に思ってくれているとは、紗夜は知らなかった。 もちろんそうだ。 城戸も伝えるつもりはなかったし、こんな事になったから話しておこうと思ったのだ。 「けれどそれが人だと話は違う。どんな結果になってもこの恋は紗夜ちゃんのものになるでしょう。それが中途半端な人間なら許しませんが、明らかにキチンとされた方ですからね。」 それが単なる売名行為のようなものだったり、明らかな一時的な熱病のようなものならば城戸は許さなかった。 けれど紗夜が欲しくて欲しくて仕方なかったものは、そんなものではなかった。 それも城戸にとっては嬉しい。 「正直、嬉しいですよ。それにここ数週間一緒にいて、よく分かっています。辻堂さんは責任感のとても強い方ですから。」 「お付き合い、していいんですか?」 「今時、そんなのダメなんて言いませんよ。あなたは女優なのだし、経験は全てプラスになるはずです。」 そう言って、城戸はにっこり笑う。 「きっともっと深みが出て良い女優さんになれると思いますよ?あと、積極的に発表するつもりはありませんし、辻堂さんのお立場もありますが、もしも指摘を受けた場合は事実を伝えます。」 「指摘…」 「まあ…いわゆるすっぱ抜かれる、というやつですね。ああいうのは隠すからおおごとになる。堂々としたら面白くもなんともないものですから。」 けれど、城戸にはなんとなく分かる。 もしもこの2人の恋が世間に漏れたとしても、世間は認めてくれる気がするのだ。
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