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「ふらっと入ったけど正解だったな。」
「空いていて良かったですね。」
そこへバーテンダーが飲み物を置く。
「ちょうど、空いたところだったんですよ。」
「へえ、運が良かった。」
「どうぞ、ご贔屓に。」
綺麗な顔のバーテンダーはにこりと笑う。
「今度は仲間も連れてきますよ。」
藤崎と2人で飲みに行ったことはなかったけれど、こんな粋な対応もできるんだと思うと辻堂は感心してしまう。
今まで、こんな上司はいなかった。
「チーフって…。」
「ん?」
「カッコいいですよね。」
「はっ?!お前、まだ酔ってないよな?」
「顔は整っているし背も高くて英語はペラペラだし、しかも店選びもお店の人とのやり取りもスマート…って。さぞかし、モテるんでしょうね。」
軽くグラスを合わせて、口元に持っていきかけていた藤崎は、危うく飲み物を吹き出すところだった。
「…っ?!何を言いだすんだ、お前は。」
「紗夜は…誰とも付き合ったことがないそうなんです。」
「ああ…。」
「初めて…ってことですよね。僕…相手が初めてって経験ないんですけど…。チーフ…ありそうだな…。」
背中を汗が伝う藤崎だ。
「だ…誰にでも初めてはあるからな、うん。」
辻堂!相手が初めてって経験がない、ってどういうことなんだ?!
一気に喉がカラカラになった、藤崎がグラスを煽る。
「すいません!お代わりくださいっ!同じので。」
「チーフ、ペース早いですね。」
「いや、なんか喉乾いて…。」
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