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「俺はこのまま会社に帰って、草下と大輝にも案件の打ち合わせをして、明日からの警備計画を作る。」 時刻はすでに夕刻だったが、これから、会社に戻って、計画書や申告書等の作成をすると藤崎は言う。 なんとも素早いし、藤崎の案件に対するスピード感もものすごい。 「それだけ切羽詰まってる…ってことですか?」 「そうだな。」 それでも、藤崎に慌てた様子は一切なく、こんな状況にも慣れているのだろうと思われた。 「ストーカーに関するレクチャーを覚えているか?」 「はい。」 研修の一環として、藤崎は様々な講義も実施していた。 ストーカーに関する講義もその中の1つだ。 「文書ってのは実はとても深層心理の現れるものなんだ。それからすると、今回のクライアントはすでに、危険な領域にきていて、張り付き警護が必要だと俺は判断する。 しばらく、辻堂1人にすることになるが、ここは、ある程度他人の目もある。何とかなるかと思うんだが、どうだ?」 両腕を組んで立っている藤崎が、辻堂にそう問いかけた。 辻堂は自分の気持ちを改めて確認する。 大丈夫。 浮ついてもいないし、腰も引けてはいない。 今までやってきたことを、実践するだけ。 キリリと気持ちは引き締まったままだ。 「大丈夫です。」 「うん。辻堂ならそう言ってくれるかな、と思って。俺は一旦離脱するけど、何かあれば、すぐ連絡してくれ。うちのチームを、俺は信頼してる。」 にこっと笑う藤崎はとても満足そうだ。 確かに一人での警護は基本的にはしない。 チームで行わないとリスクが大きくなるからだ。 だからこその、藤崎の確認。 「クライアントがすでに危険なのであれば、なおさら。彼女を一人にすることなんて、出来ません。何かあったら後悔することが分かりきっていますからね。」 任せてください。 辻堂がそう言うと、藤崎は笑顔を見せた。 「頼んだ。」 そのまま、一緒に来ていた、藤崎、白石、社長は帰って、辻堂は城戸とその場に残る。 「後ほど、紗夜ちゃんにも紹介しますね。」 「はい。」 ちょうどそんな話をしていると、門倉紗夜が数人のスタッフと一緒に、城戸のところに戻ってきた。 「お疲れ様、紗夜ちゃん。見てないけど、良かったよ。」 「城戸さん、見ていないのに、良かったなんて、何で分かるの?」 ふわふわの長い髪、肌はまるで陶器のように滑らかで、声は驚くほど澄んでいる。 「紗夜ちゃん、こちらは社長がお願いした警備の人。今日、このまま、紗夜ちゃんについてくれるんだって。」 「え…。」 城戸の横にいた辻堂に、紗夜は目を移す。
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