2.

1/2
895人が本棚に入れています
本棚に追加
/17

2.

3人で会うことになったものの、辻堂は、実は当日までさほど乗り気ではなかった。 言うなれば、当日も。 待ち合わせの店の入り口に着いた時、少しだけ考えが変わった。 それは、その店が非常に洗練されていたから。 店の選択というのは、実にセンスを問われるものだと思っている。 それによって、印象が変わることすらあるものだ。 今回は期待せず来たら、期待を大きく超えていたケース。 この先にいるのは、何者なのだろうか、という気持ちになった。 辻堂が個室に案内された時、すでに、その人は座っていた。 「白石さん、こちらが辻堂さんです。」 「こんにちは。白石と申します。」 にこやかな人、という印象。 しかし、どこかで名前を…。 「辻堂さん、白石さんは元々私の上司だった方なんです。」 承認印か。 何度か、名前は見た事はある。 名刺をもらったけれど、社名だけではよく分からない感じだ。 ご本人は取締役部長…。 「すみません。私は今は特に名刺もないような立場で。」 「うん。検察を辞めたんですってね?」 にこにこしながら、どストレートな人だ。 しかし、気分は悪くはない。 「僕もその名刺、何の会社か分からないですよね。警備業なんですよ。」 プライム・サービス・グローバル、確かにこれだけでは、何の会社なのかさっぱり分からない。 「なるほど…。」 警備会社、そう言われても、頭に思い浮かぶのは、工事現場で赤いライトを振る人だ。 あとは、ビルの入口に立っている人とか。 最近は電車のホームにもいたりするな…と思いながら、なぜ、自分なのか…という考えになる。 そこからは、すこし、業界の裏話的な話も交え、その白石部長のエピソードを聞いたりしていた。 ご苦労されて、まさに現場からの叩き上げ、で署長にまでなった人らしい。 現場の星、というか現場の憧れの存在であったようだ。 けれど、押しが強いわけでもなく、どちらかと言うと温和だし、とても叩き上げには見えない。 料理もある程度進んで、酒も進みかけた頃合いである。 「辻堂さん、4号警備ってご存知ですか?」 「すみません、あまり詳しくなくて。」 「警備業っていくつかに分かれているんですけどね、4号警備は分かりやすく言うと、ボディーガードです。 身辺警備、緊急通報サービスに対応します。今、個人でもこちらの需要が大きく叫ばれています。 まあ、叫ぶ、と言っても範囲は限られているけれど。警察官も成り手が少ないそうなんですね。今後、テロへの警戒を含めて、民間と官公庁がどこまで協力できるか、というところも検討されています。」 実のところ、辻堂は書類上のことには詳しいが、現場にはさほど詳しくない。 頷いて聞くしかない状況だ。 「うちの会社は今、4号警備に参入しようとしていまして、現在、海外からプロとして活躍していた人材を招聘して、専門部署を立ち上げるところです。」 「海外…。」 「彼も面白い人材ですよ。元警察官で、数年で退職して単身アメリカに渡って、現地の警備会社に就職して、プロの第一線にいた人物です。」 ものすごく、ごつい、小山のような男を想像する。 しかし、そんな人物までいるとは、白石という部長の笑顔の下の本気度が半端ない、という事は分かる。 「辻堂さん、その新しいチーム、入ってみませんか?」 「は?!」 「とは言え、突然のことだし、あなたのような人なら、引きも切らないでしょうから、一度、そのチームを率いている部長代理に会ってみてください。 そこで、お断りいただいても構わないですよ。」
/17

最初のコメントを投稿しよう!