3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
愛のかたちは輪郭を辿れない
昔から奇抜な事をして驚かせる事に関してはピカイチだった。
彼女のする事はいつも突拍子もなく、それにいつも振り回されているぼくが早死にしたら間違いなく彼女のせいだ。そう思えるくらいは何度も寿命の縮まる思いをしたものだ。
毎年バレンタインにチョコをくれるのは有難い事だがそのチョコの味が全くもって有難くない。
初めて貰ったチョコでぼくは人生で初めて舌に火傷を負った。舌がヒリヒリして一週間は柑橘系を食べられなかったのを覚えている。
次の年は歯が折れるんじゃないかと思うくらいに硬かった。硬すぎて実際ぼくは最後まで残っていた乳歯が取れたのだ。
そんなこんなで毎年手の込んだ甘くないチョコはぼくの苦い記憶としてしっかりと残っている。辛いチョコ、酸っぱいチョコ、いろんなチョコを貰ったが思い返せば彼女のチョコはいつも手作りで、同じものが被った事はなかった。
手の込んだ嫌がらせだ。もっと違う方に手を込めてほしいとは思ったが、嫌な顔をし悪態をつきながらも、ぼくが目の前で完食してみせると彼女は嬉しそうに笑うものだから、決して嫌がらせではない。そう、彼女はドSなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!