社会人

4/4
前へ
/20ページ
次へ
早退して、部屋に戻ると、とりあえず海外土産で貰ったワインを、がぶ飲みした。 ふらふらになり、ベッドに横になり、そのまま眠ってしまったらしい・・・ 携帯の着信音と、チャイムの音が、交互に、しつこく鳴り続け、重たい体を嫌々起こす。 インターホンを見ると、樹生だ。 ドアを開けると、樹生が 「大丈夫?・・・・・・・・・・・お酒、飲んでるの?」 ふらついていた僕は、どすんと、尻餅をつくような感じで、玄関にへたり込んだ。 頭が、ぐらんぐらん揺れ、樹生の顔も、ぐらぐらと揺れる。 こいつのせいで・・・・・・・・・・! 助け起こそうとした樹生の手を、振り払った。 「全部、お前のせいだよ、樹生」 「僕?僕が、何を君にしたんだよ・・・・あ~あ、こんなに酔っ払って。ほら、起きて」 今度は抱き起こそうとした樹生の体を突き飛ばし、ずっと心の中に沈めていた言葉を、樹生にぶつけた。 「昔から、僕は、おまえが、大嫌いなんだよ!ずっと、大嫌いだった。」 「何を言ってるんだよ。晴久の酒癖が悪かったとは、知らなかったよ」 その時までは、樹生も、僕が酔っ払って心にもない事を言っていると、信じようとしていた。 「ずっと、仲のいいフリをしてただけだ!。大嫌いだったんだよ。最初に逢った時から!」 樹生は、凍り付いたような表情で、僕を、黙って見つめていた。 「お前、本当は知ってたんだろう?知ってて、仲の良いフリしてみせてたんだ。それで、わざと僕の邪魔をしてきたんだ。勉強も、運動も、仕事も、水原さんも!」 「晴久・・・・ねぇ・・・酔ってるだけだよ・・・ね?そうだよね?」 樹生の顔が、みるみる、泣きそうな顔になる。 初めて見る樹生の泣き顔。 いい気味だ。 ふん・・・・・・・・お前なんか・・・・・・・お前なんか・・・・・・ 僕は、よろよろと立ち上がり、樹生に入らせたことの無い書斎の扉を開けた。 今まで、密かに集めた、科学や錬金術の本が並んだ本箱と、机。 机の上には、実験道具・・ではなく、自分好みにブレンドしたワインのボトル。 錬金術で、何か特別な薬が作れると思うほど、僕は馬鹿じゃ無い。 馬鹿じゃないけど、実験みたいな事をしたくて、ブレンドしてみたワインだ。 そのワインをグラスに入れて、また玄関へと戻る。 樹生は、目から涙を流して、さっきと同じ姿勢で突っ立っていた。 「これは、僕が開発した、何でも望みの叶う薬だ。いいか、これから、僕の望みを言う」 そう言い、僕は、その液体を飲み干し、叫んだ。 「篠原樹生という男は僕にはいらない、消えちまえ!」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加