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早退して、部屋に戻ると、とりあえず海外土産で貰ったワインを、がぶ飲みした。
ふらふらになり、ベッドに横になり、そのまま眠ってしまったらしい・・・
携帯の着信音と、チャイムの音が、交互に、しつこく鳴り続け、重たい体を嫌々起こす。
インターホンを見ると、樹生だ。
ドアを開けると、樹生が
「大丈夫?・・・・・・・・・・・お酒、飲んでるの?」
ふらついていた僕は、どすんと、尻餅をつくような感じで、玄関にへたり込んだ。
頭が、ぐらんぐらん揺れ、樹生の顔も、ぐらぐらと揺れる。
こいつのせいで・・・・・・・・・・!
助け起こそうとした樹生の手を、振り払った。
「全部、お前のせいだよ、樹生」
「僕?僕が、何を君にしたんだよ・・・・あ~あ、こんなに酔っ払って。ほら、起きて」
今度は抱き起こそうとした樹生の体を突き飛ばし、ずっと心の中に沈めていた言葉を、樹生にぶつけた。
「昔から、僕は、おまえが、大嫌いなんだよ!ずっと、大嫌いだった。」
「何を言ってるんだよ。晴久の酒癖が悪かったとは、知らなかったよ」
その時までは、樹生も、僕が酔っ払って心にもない事を言っていると、信じようとしていた。
「ずっと、仲のいいフリをしてただけだ!。大嫌いだったんだよ。最初に逢った時から!」
樹生は、凍り付いたような表情で、僕を、黙って見つめていた。
「お前、本当は知ってたんだろう?知ってて、仲の良いフリしてみせてたんだ。それで、わざと僕の邪魔をしてきたんだ。勉強も、運動も、仕事も、水原さんも!」
「晴久・・・・ねぇ・・・酔ってるだけだよ・・・ね?そうだよね?」
樹生の顔が、みるみる、泣きそうな顔になる。
初めて見る樹生の泣き顔。
いい気味だ。
ふん・・・・・・・・お前なんか・・・・・・・お前なんか・・・・・・
僕は、よろよろと立ち上がり、樹生に入らせたことの無い書斎の扉を開けた。
今まで、密かに集めた、科学や錬金術の本が並んだ本箱と、机。
机の上には、実験道具・・ではなく、自分好みにブレンドしたワインのボトル。
錬金術で、何か特別な薬が作れると思うほど、僕は馬鹿じゃ無い。
馬鹿じゃないけど、実験みたいな事をしたくて、ブレンドしてみたワインだ。
そのワインをグラスに入れて、また玄関へと戻る。
樹生は、目から涙を流して、さっきと同じ姿勢で突っ立っていた。
「これは、僕が開発した、何でも望みの叶う薬だ。いいか、これから、僕の望みを言う」
そう言い、僕は、その液体を飲み干し、叫んだ。
「篠原樹生という男は僕にはいらない、消えちまえ!」
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