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翌朝、二日酔いで目を覚ました。
玄関には、空のワイングラスが転がっていた。
隣の樹生の部屋のインターホンを鳴らしたが、応答が無い。
一人で、出社したが、朝のミーティングが終わっても、樹生は現われない。
夕方になった頃、ちょっとした騒ぎになった。
「篠原君と連絡が取れないから、警察に連絡して、部屋を訪ねてみよう」
課長にそう言われたときに、昨夜の顛末が脳裏を過ぎった。
まさか・・・・・・・
警察官の制服が、事の大きさを、尚更に大きくしているように思えてならなかった。
僕の心臓は、嫌な予感に震えていた。
一応、インターホンを鳴らしてみたけれど、応答は無い。
警察官の合図で、いつも見慣れている管理人さんが、樹生の部屋の鍵を開けた。
「樹生?居るの?上がるよ?」
先頭の僕が、そう声をかけながら、靴を脱いで部屋へと移動した。
その後を、警察官と、班長と課長が続く。
樹生の部屋は、きちんと片づけられていた。
そして、彼の姿は、どこにも無かった。
そのかわりに、テーブルの上に、白い封筒が、3通置かれていた。
1通は、会社宛。
1通は、両親宛。
1通は、僕の名前が書かれていた。
まずは、会社宛の封筒を、課長があけた。
会社宛の、お詫び文と、退職届が入っていた。
「どういう事だ?」
班長が、僕を見た。
僕は、震える手で、自分宛の封筒を開けた。
そこには、便せんに、見慣れた文字・・・・・・・・・1行だけの文字。
「篠原樹生は消えます」
僕は、声にならない叫びを上げた。
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