9人が本棚に入れています
本棚に追加
樹生が居なくなればいい・・・・・・・・・
子供の頃から、ずっとそう思ってきた。
樹生がいなくなれば、自分は幸せになれると信じていた。
だけど、本当に樹生が居なくなってしまってから、僕の世界は、一気に、色あせたものに変わってしまったのだ。
どうして?
樹生が姿を消してから、1年が過ぎた。
僕の生活も、一変した。
まずは、仕事をする気が、全く失せてしまったのだ。
アメリカの研究所に行くことも、誰も発見できなかった素晴らしいものを発見する夢も消えた。
仕事に身が入らなくなった僕は、気がつくと、資料室へ配置転換されていた。
本来なら、リストラされてもおかしくなかったのだけれど、樹生の事件で、社内の同情が僕に集まり、そのおかげで、首が繋がったのだ。
惰性で出勤し、制服に着替え、資料室に保管されている記録媒体の整理をする日々・・・
友達とも音信が途絶え、交流も無くなった。
笑ったり、はしゃいだりする事も無くなった。
当然、こんな僕に、声をかけてくる女子社員も居ない。
樹生が行方不明になってすぐ、祖父母も、相次いで他界してしまった。
こんな僕の姿を見なくてすんで、幸せだったかもしれない。
こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃ・・・・・・・・・・・・・
最初のコメントを投稿しよう!