転校生

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樹生は、自分の家に遊びにくるよう、しきりに誘ってきた。 遊びに行くと、自分の家族に、僕の事を「親友」だと、紹介した。 樹生によく似た顔のお母さんは、僕をいつも歓迎してくれた。 手作りのお菓子でもてなしてくれる、優しいお母さんだった。 土日に遊びに行くと、樹生のお父さんが、ドライブに連れて行ってくれたりした。 きさくで、楽しいお父さんだった。 学校にいるときと違って、家族でいるときの樹生は、ワガママを言ったり、だだをこねたりして、時々、両親から叱られたりする事もあった。 たわいもない、そんな親子のやり取りが、羨ましかった。 なぜなら僕は、両親が離婚して、祖父母に育てられていたからだ。 勉強や運動を頑張るのも、優等生でいるのも、全部、育ててくれている祖父母の為だ。 物心ついた頃から、両親は、いつも喧嘩ばかりしていた。 離婚して、祖父母に引き取られたときは、ほっとしたけれど、やっぱり寂しかった。 祖父母はよくしてくれたけれど、僕には、「本音」を言える人が居ない。 そんな僕に、樹生は、「素敵な家族」を見せつけたいんだ・・・ 両親の居ない僕を見下して、優越感に浸りたいんだ、あいつは。
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