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「ちょっと、待って。
なんで、消えなきゃならないんだよ」
木の実は大きな目をまた潤ませている。
「それだけ言いたくないんです…
ちょっと前の私をもう思い出したくもない。
それ位、嫌なんです…」
ジャスティンはここで別れを切り出されるとは思わなかった。
といっても、一週間後には、木の実は俺の家から出て行くのだけれど…
でも、それでも、それは今ではない。
「ねえ、もしかして、警察に追われてるとか…?」
「そ、そんな事じゃないです…」
木の実の目から、我慢していた涙がポロポロ流れ出した。
ジャスティンは女の子相手の恋愛というものに、これまで縁がなかった。
という事は、完全なる純粋な初恋だ。
正直に話す事が相手を傷つけるなんて、男相手ではあり得ない。
でも、木の実は心に傷を負った女の子であって、その傷口を優しく癒さなきゃならないのに、俺は、きっと、その傷口に塩を振りかけてしまったに違いない。
「ご、ごめん、冗談だよ…」
「冗談って分かってても、すごく傷つきます…
私は何も悪い事はしてないから…」
木の実は膝に置いていたナプキンで涙を何度も拭いて、深呼吸をして息を整えている。
「本当にごめん、ほら、これ食べていいよ」
ジャスティンはこの行為が吉と出るか凶と出るか分からなかったが、慌てて木の実の皿に自分の分のステーキを載せた。
「い、いいんですか…?
嬉しい… ありがとう……」
ジャスティンは心の底からホッとした。
木の実の涙で腫れた目は細くなり口元はほころんで、最高に可愛い笑顔が見えてきた。
ナッツが単純で食いしん坊な女の子で、本当に良かった……
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