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 相手の貴族が鞠を蹴り上げ、雅経の方に飛んでくる。雅経は落ち着いて、なるべく高く飛ばないように足の甲で蹴り返す。  他の貴族と違い、低く蹴り上げる雅経に、観戦している貴族たちは臆病者など話した。しかし、集中する雅経の耳には届かず、彼は忠実に童の助言を守り続ける。  相手の貴族も砂場の隅の方に蹴り渡そうとした。しかし、雅経は着実に鞠を受け取り、余計な衝撃を吸収し相手の貴族へ戻す。そのうち、相手の貴族の集中力が切れ始め、鞠をあらぬ方向へ飛ばした。やがて、白い鞠は砂場の外へ転がっていく。 「勝者、難波雅経」  審判が判定を下すと、貴族たちから歓声が上がった。遠くから観戦してした父親も満面の笑みを浮かべる。雅経は安堵の息をついた。  それから、雅経は幾度と蹴鞠の勝負をしては勝っていた。童の助言通り、低く蹴り上げたことにより、決して落とすことはなく勝ち続けた。何度も蹴鞠の会で勝つうちに、人々は『蹴鞠の神様』として雅経を称えた。
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