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時は現代。雅経が住んでいた寝殿は長い年月を経て神社となっていた。蹴鞠をしていた場所も小さな広場となっている。その神社に一組の親子がやってきた。
一人は髪を短く切り揃えた女子高生でもう一人はその母親であった。二人は手水舎で清めると、お賽銭箱の前に立つ。小銭を入れ、二礼二拍をして手を合わせた。
「助言のおかげで私はプロサッカーチームに入ることができました。本当にありがとうございます」
一礼したあと、母親が声をかける。
「ところで、本当なの? ここに奉られている人に会ったことあるって」
「うん、小さい頃だけどね。夜に一人でここに練習しに行ったら会ったの」
「でも、変じゃない? 蹴鞠が得意な人にサッカーのリフティング教えたって」
「そうなんだよね。やっぱり夢だったのかな」
小首を傾げながら鳥居の方向へ戻っていく。ふと彼女が本殿に一番近い木を見ると、その根元に巾着袋が落ちていた。気になった彼女はその木へ歩み寄り、巾着袋を拾ってみる。開けてみると、小さな丸い石のようなものがいくつか入っていた。それと同時に一瞬懐かしい匂いがした。すると、彼女の頭に若者の微笑みがよぎる。
「ありがとう。神様」
彼女は小声で呟き、巾着を握りしめた。
おわり
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