第二話『ぐりとぐら』中川季枝子・作/大村百合子・絵

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「”のねずみの ぐりと ぐらは”――」 「でも4歳にはすでにひとりで読めるようになっていたそうです」 「ママ、寂しい」  わざとらしくおとがいに手を当てて、物憂げにため息をつく。  そうしているとあたかも独り立ちする愛子を寂しく見送る妙齢の女性のようにも見えてくる。先輩は時折、年齢不詳だ。 「誰かに読み聞かせたくなる気持ちは分かりますけどね」  強引に話を戻す。 「韻が良いというか、思わずくちずさみたくなる魅力がありますよね」 「”ぼくらの なまえは ぐりとぐら このよで いちばん すきなのは おりょうり すること たべること ぐり ぐら ぐり ぐら”」  拍子をつけて、歌うように先輩が口ずさむ。  よく通る落ち着いた声色は耳に心地よく響いて、いつまでも聞いていたくなる。  ちなみに絵本のあらすじは、こうだ。  野ねずみのぐりとぐらはある日、森の奥へとおでかけすると、そこに大きなたまごをみつける。持ち帰るには大きすぎるので、家から料理道具を持ってきて、その場でカステラを焼きはじめる。すると、匂いをかぎつけて森中の動物たちが集まってくるので、みんなで仲良くわけて食べる。 「物語に出てくるお料理って、どうしてこんなに美味しそうなのかしら」     
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