第一話『夢十夜』夏目漱石

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 百年待てば再び逢えるといった言葉を信じて、待ち続ける。  やがて、女は百合の花となって生まれ変わり、二人は再会する。  素直に解釈すれば、そういう話だ。  でも、それだけでは終わらない深みがある。 「……そうね」  先輩はおとがいに手を当てて考えこむ。  嫌な予感がする。 「じゃあ、試してみましょう」 「……また、ですか?」  思わず呆れた声が漏れる。  先輩はにっこりと微笑んで、 「もちろん。だって私たちは『実践的文学部』だもの」    ・ ・ ・  リノリウムの床の上を軽く掃除してから、制服の上着やらジャージやらを広げて敷きつめる。 「それじゃあ、どうぞ」 「ありがとう。紳士ね」 「あたりまえですよ」  女性をそのまま床の上に転がすなんてできるわけがない。 「仰向けでいいのよね?」  先輩が即席の敷物の上に体を横たえる。  そこで失態に気づく。 「あー、すみません、ひざ掛けを忘れていたんで、一度、体を起こしてもらえると」  いつもは膝丈のスカートが広がって裾がやや上がり、形のよい膝頭がむき出しになっている。すらりとした太ももまで見えてしまいそうだ。     
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