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「そうかもしれないわね。でも、もしも疑われたとしても、後でわたしが必ず弁明して、ふぶきの無実を訴えるから安心して。だから、ねえ、ふぶき。冒険の旅に一緒に来るか来ないか、今すぐ選びなさい」
「姫、本気なんですか?」
「もちろん本気よ。最初で最後の機会だもの。わたし、後悔や未練を残したまま結婚したくないの。お願い、ふぶき、協力して。ね?」
ゆめさきは、ふぶきの手を取って詰め寄った。ふぶきは口うるさいが押しに弱いことを、ゆめさきはよく知っている。一生懸命に頼み込んで断られたことは、今までに一度もない。
ふぶきは息苦しげに、ゆめさきのルビー色のまなざしから顔を背けた。
「……わかりました。お供します」
「やったぁ! ありがとう、ふぶき!」
ゆめさきは、ふぶきに飛び付こうとした。が、勢いの調整を誤った。今のゆめさきの複写の効果は、ふぶきの根ざしものから入れ替わり、きらぼしの根ざしものによって全身の力が増している。ゆめさきは、それをすっかり忘れていた。
猛烈な勢いでぶつかられ、ふぶきが豪快に吹っ飛んだ。受け身もろくに取れず、尻餅をついて痛みに呻く。
「姫、あなたという人は……」
「やだ、ごめんなさい。悪気はないの。本当よ」
青い目に涙を浮かべたふぶきに、キュイと、あらしが鳴いて鼻面をすり寄せた。もちづきが駆け寄って、ふぶきに手を貸した。
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