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「どこかがひどく痛むようなら、私が【治癒】しよう。私の名は、もちづき。ゆえあって仮面は外せぬが、勘弁してほしい」
「ご丁寧にどうもありがとうございます。とりあえずあなたは常識的な人のようで、安心しました」
きらぼしが肩をすくめた。
「お姫さんより常識破りな人間は、そうそういないと思うぜ。おれのことは、きらぼしと呼んでくれ。ひとまず、誰かに見付からねぇうちに王都脱出といこうか」
「しかし、どうするのだ? 王都の外周を巡る城壁は、よじ登れる高さではないだろう?」
もちづきの疑問に、ゆめさきは胸を張って答えた。
「わたしがあなたたちを抱えて飛べばいいのよ。こんなふうに」
ゆめさきは、足下に戻ってきたあらしを拾い上げて胸に抱いた。あらしがピタッとくっ付くと、思いがけずふくよかな胸が、柔らかそうに形を変える。
きらぼしが「はぇっ」と間抜けな声をあげ、もちづきがピシリと固まった。ふぶきは、またしても、長々とため息をついた。
「そろそろ本気で、嫁入り前の姫君だという自覚を持ってもらいたいんですが」
「何か言った、ふぶき?」
「いえ。ぼくも自分で空を飛べたらいいのにと思っただけです」
「あら、ふぶきはふぶきのままでいいのよ。あなたにできないことは、わたしが手伝ってあげるんだから」
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