46人が本棚に入れています
本棚に追加
久し振りのこの距離。
でも今は近いのに遠い。
私に肘が触れないようにと姿勢を変える彼。
離れてしまったこの距離を、再び縮めることは出来ないのだろうか。
戻れるなら、戻りたい。
それはもう無理?
「しお生姜ラーメンをお願いします」
店員のおばさんに注文して、私もスマホをカバンから取り出す。
どうせ戻れないのなら……。
当たって砕けた方が諦めもつく。
無料通話アプリで、隣の彼にメッセージを送った。
彼はどんな反応を見せるのかと、緊張しながら待つ。
「……えっ!?」
既読がついたと同時に隣から声が漏れ出た。
その声の驚きに、私は不安まじりに目をやった。
「山口、え?こ、これって……」
おどおどしながら、彼がスマホの画面を私に見せる。
目を白黒させる彼に、私は小さく笑い返した。
もう、迷わない。
自信は今も無いけど、この想いは彼に知っていて欲しかった。
犬なら犬でも構わない。
大好きな人に撫でて可愛がって貰えるなら、それだけで嬉しいと、離れて気付いた。
「書いた通りです。私、本当は、佐原さんの事が好きなんです。だから……」
「おじさんゴメン!ラーメン作るのちょっと待ってて!」
セクハラじゃないです、の言葉を断ち切られ、私は腕を掴まれて店の外に連れて行かれた。
最初のコメントを投稿しよう!