強張る

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久し振りのこの距離。 でも今は近いのに遠い。 私に肘が触れないようにと姿勢を変える彼。 離れてしまったこの距離を、再び縮めることは出来ないのだろうか。 戻れるなら、戻りたい。 それはもう無理? 「しお生姜ラーメンをお願いします」 店員のおばさんに注文して、私もスマホをカバンから取り出す。 どうせ戻れないのなら……。 当たって砕けた方が諦めもつく。 無料通話アプリで、隣の彼にメッセージを送った。 彼はどんな反応を見せるのかと、緊張しながら待つ。 「……えっ!?」 既読がついたと同時に隣から声が漏れ出た。 その声の驚きに、私は不安まじりに目をやった。 「山口、え?こ、これって……」 おどおどしながら、彼がスマホの画面を私に見せる。 目を白黒させる彼に、私は小さく笑い返した。 もう、迷わない。 自信は今も無いけど、この想いは彼に知っていて欲しかった。 犬なら犬でも構わない。 大好きな人に撫でて可愛がって貰えるなら、それだけで嬉しいと、離れて気付いた。 「書いた通りです。私、本当は、佐原さんの事が好きなんです。だから……」 「おじさんゴメン!ラーメン作るのちょっと待ってて!」 セクハラじゃないです、の言葉を断ち切られ、私は腕を掴まれて店の外に連れて行かれた。
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