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憂鬱を払い除けたくて気分転換にといつもの帰り道から一本脇道に逸れる。
以前佐原さんに連れてきてもらったラーメン屋さんが目に入った。
あの時私は仕事でミスをしてしまい落ち込んでいた。
それを慰めるように誘ってくれたラーメン屋さん。
思えばあれがきっかけだったのかもしれない。
きっと照れ隠しに読んでいた新聞。
慰めるのは苦手だと言って頭を掻いていた。
思い出してつい口元が緩む。
やっぱり今も、好きだなぁ。
懐かしくなって、吸い寄せられるように暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませー」
店内には数組のお客さん。
前に来た時と同じようにカウンター席に座ろうと目を向けて、止まった。
いつも見ている後ろ姿がそこにあった。
愛おしくて、泣きそうになる。
一瞬迷ったけれど、隣に腰を下ろした。
スマートフォンを弄っていた彼が驚いたのか二度見してきて、つい笑みがこぼれた。
「お疲れ様です」
「あ、ああ……お疲れ」
挙動不審に目を泳がせながら再びスマートフォンに向く。
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