強張る

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「じゃあさ、二人きりでご飯食べに行くのは?嫌?セクハラ?」 佐原さんはたくさん美味しいお店を知っていて、たまに残業頼まれた時とかご褒美と言ってよく連れて行ってくれる。 先日食べた鹿肉のお店、美味しかったな。 ロウソクの灯りがまるで、恋人同士と惑わす。 「……いえ。別に、やじゃないです」 二人で狭いカウンターに隣り合ってラーメンをすするのも嫌ではない。 たまに肘がぶつかって、近い距離で見合うのも照れるけど嬉しい。 「だよなぁ。お前いつも何でも旨そうに食ってるしなぁ。何がセクハラだよ、田中のヤロー」 田中さんに指摘されたのがそんなに納得いかないのだろうか。 不貞腐れたように口を尖らせる。 でも、今言われた事全部、普通はセクハラだから、と心の中で突っ込む。 相手が私だから許されている行為だと、少しは気付いて欲しい。 ねえ、気付かないの? 私があなたの事、大好きだって。 普通、こんな事好意も無い人にされたらセクハラに決まってるじゃない。 ……バカ。
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