強張る

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「あ、じゃあこれは?」 何かを思い出して一段と目が大きくなる。 その表情が可愛いと思ってしまう。 だから、油断した。 「匂いクンクン嗅ぐの」 そう言って首筋に鼻を近づけてクンクンされた。 刹那、肩が強張る。 声が漏れそうなのを何とか堪えた。 「……ぃぇ」 緊張で声がかすれたのは、どうか気付かないで。 これだけは未だに慣れない。 嬉しい、けど、すごく……恥ずかしい。 「良かった。俺、これ結構好きなんだ。山口の匂いって本当に良い匂いだよな」 彼の吐息が首筋をくすぐる。 耐え切れずに一歩下がると、漸く彼も離れてくれた。 「田中の奴、俺の事セクハラ上司とか言うんだぜ。失礼な奴だよな」 納得いかないように腕組みしながら顔をしかめる彼。 それはそうだ。 田中さんが正しい。 他から見ればセクハラ以外の何物でもない。
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