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傘をさしたまま、私はおんぼろ家の前で少し笑った。
でも、こんなぼろぼろの家が、ひとつの楽器になったかのように祭囃子を奏でているのは、なんというか、ほっこりする。
私の耳にはただの雨の音ではなく、れっきとした祭囃子に聞こえるのだ。そう信じてしまうくらいには。
これで本当に何かオカルトチックな現象が起こっていたのならオチもつくが、あいにくここは何の変哲もない現実だ。ファンタジーはそうそう起こらない。
さて、謎は解けてしまったわけだけど、これからも私は雨の日の出勤を少し楽しく感じるだろう。
家に帰ったら、妻にこのことを話してみようかと思うけど、笑われるだろうか。
「まあ、あなたはそういう人だよね」とか、言われること間違いなしだ。そう思いながら帰路についた。
祭囃子はまだ聞こえている。
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