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となりの家の祭囃子
新居に引っ越してきてから一か月が経ったのだが、最近少し奇妙なことが起きている。
新しい我が家は新築のマンションで、しかしその隣はぼろい一軒家だ。いつ建てられてのかも定かではない、壁も屋根もぼろぼろの家。人気はないので、おそらくそこには今は誰も住んでいない。
ともすれば建て壊しになりそうなそのおんぼろの家の前を、私は毎朝通って出勤している。
しかし、その家のところを通り過ぎるとき、時折妙なことが起こるのだ。
最初に気づいたのは、引っ越してきて三日ほどたったころだろうか。
その日は雨だった。私はスーツ姿で、傘をさしてそのおんぼろ家の前を通った。
すると突然、どこからともなく、
「ドンドコドンドンドンドン」
という太鼓のような音が聞こえてきたのだ。
驚いてあたりを見回したが、太鼓を叩いている人などいない。
しばらくして、私はそのドンドコドンドンという音が、目の前のおんぼろ家から聞こえてきていることに気づいた。
「ドンドコドンドン、ドンドコドンドンドンドン」
その家にあかりはついていない。しかし、絶え間なくそれは聞こえる。
誰かが、この家の中で太鼓を叩いている?
(いや、そんなわけないよな)
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