となりの家の祭囃子

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 このおんぼろ家は人が住めるような風貌じゃない。でも、音が聞こえてくるのだ。  気になったものの、私のほうは出勤時間が迫っていたので、不思議に思いつつその場をあとにした。  それ以来、その家の前を通ると時折、太鼓の音が聞こえるようになった。  いや、太鼓というよりは、祭囃子の音といったほうがわかりやすいだろうか。  ドンドコドンドンドンドン、という音は軽妙でテンポが良く、はじけるような軽さで、時折ドンドコドンがポンポコポンに変わることもあったので少し笑ってしまう。  複数人数で複数の太鼓を叩いているような音。  祭囃子の練習をしているみたいだった。  相変わらずおんぼろ家に人の気配は全くない。でも、それはそこを通るたびに私の耳に入ってくる。 (幽霊とか、精霊とか、それとも神様が、あの家で演奏してるのかね)  年甲斐もなく、そんな子供じみた妄想をしてしまうほどには、私はあの不思議な現象を楽しんでいた。  それからの私は、そのおんぼろ家の前を通るたびに、「今日はあの祭囃子は聞こえるだろうか」と期待するようになった。   しかし、やがて私はひとつの答えを見つける。  祭囃子の音は、聞こえる日と聞こえない日があるのだ。     
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