となりの家の祭囃子

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 家の前を通るとドンドコドンドコやっている日と、シーン……としている日がある。  この差はなんだろう。何か法則性があるのか?  そう考えたとき、私はあっさりとあることに気づいた。  晴れの日や曇りの日は、家の前を通っても祭囃子は聞こえない。  そして、雨の日には絶対に聞こえる。  それに気づいて、私は会社帰りにもう一度おんぼろ家の様子を観察した。  その日も雨が降る。傘をさしている私。  おんぼろ家の屋根に雨粒が当たる。雨粒は屋根の上を転がり落ちていき、ぼろぼろの雨どいを伝っていく。  雨が、おんぼろ家のどこかにあたるたびに、「ポン」とか「トン」とかいう音が発せられる。  雨粒は連続でどんどん降ってくる。  雨どいを伝って水がどこかへ着地するたび、屋根の上を雨がはじくたび、「ポン」「トン」「ドン」という音が繋がって、  それが繋がってあの「ドンドコドンドンドンドン、ドンドコドンドンドンドン……」になっていたのだ。  拍子抜けしてしまった。  私が祭囃子だと思っていたのは、ただの雨の音だったのだ。  雨の音を「神様が演奏してる音かもしれない」と信じ込んでいただなんて、人に話したらバカにされてしまうことうけあいである。ましてやこんな年をくったおっさんがそんなことを考えていたなんて。     
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