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ほら、僕らの家系って江戸時代から続いてるって聞いたことあるよね? その頃、ひょっとしたら神仏に仕えていたのかも。それでうんと徳が積まれたのかな。いやね、いかにも~な装束で僕を迎えに来たご先祖様がいたんだって。烏帽子に狩衣ってやつ? 神主さんみたいに見えるけど、まぁ、よく分かんない。とにかく、霊感がまるっきりない兄ちゃんが僕を視れるのは、ばあちゃんのおかげなの。
すごいでしょ?
僕もばあちゃんも兄ちゃんのことが心配で、心配すぎて踏ん張ってるんだよ。このまま居座って、立派な浮遊霊を極める道もあるけど、そうしたらもう生まれ変わることが出来ないみたい。この先ね、兄ちゃんがこっちへ来ても会えなくなっちゃうんだって。この際僕は構わないけど、兄ちゃんが悲しむと思うから、足掻いてみることにした。何よりそれが兄ちゃんの為になるって信じてるからさ。
いい?
本当のこと言うとね、兄ちゃんの一番は僕じゃなきゃ嫌だよ、そりゃ。
でも駄目なんだ。
僕は兄ちゃんを守ってあげられない。声も掛けられない。一方通行って辛いんだ。
だからね、僕やばあちゃんがいなくても大丈夫にならないと駄目だよ。もっと他にね、すごい夢中になれるものを見つけて欲しい。ずっとずっとそう考えてる。
ほら、僕って映画館に忍び込めるし、女の子やおばさん達が夢中になるドラマもたくさん観てる。兄ちゃんはそういうの全然興味がないから知らないだろうね。
僕と一番趣味が合うのはね、二軒隣りの奥さんだなぁ。
もうね、僕は兄ちゃんが知らないような世界をたっくさん知ってるんだよ。
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