理想郷にはまだ遠い

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転生した人達の平行世界での生活も板についた頃、街に元から住んでいた人型の生物に焦燥感を抱く。 その人型の生物は人間より知能が劣るようで、見た目も醜く、常に擁護しないと事故死または失踪してしまうほど生活が安定しない。 その生物を観察してみると、壁と会話していたり同じ場所をぐるぐる回っていたりしている、茜はこの不審な様子が怖くてなかなか話しかけることができない。それに相手は人ではないのでますます警戒心が高まる。 ある日、稲畑の脇道を通ると稲作をする非人物を見かけた。我々が見かける非人物の全ては見かけはほぼ同じようだ。 茜「(へー、あの知能で稲作なんかするんだ…)」 面白そうだったので畑の中に入って非人物と一緒に色々栽培していたのだが、非人物は余ったスペースを中途半端に残して非効率的な利用をしていた。 茜は非人物が畑に入ってからの行動を観察していたが、特に稲であれば既に成熟したものが沢山あるのに、余さず栽培する事なくその段を後にする。 これは何か意味があるのか、あまり農業には詳しくないので口出しできないのかもしれないが、明らかに勿体ない、どうせ後は枯れるだけなのに。 仕方なく、非人物が余した食物を回収するが食物には何の問題もない。結果的に非人物は知能が低いのか高いのか分からない状態になった。 そんな近況を同居する「憾(かん)」に伝える。 因みに、我々転生した人々は転生をして身を改めた理由から苗字を除いて「名前」しか持たない。 それとここに集まる人は生前、いつ、何処から来たのか散り散り。かと言って過去を無闇に掘り返してはならない。 それは危害を与えるからというより、転生して今はこの世界で暮らしているのだから考える必要はないのだ。またはトラウマを思い出させたくないと互いに気を遣っているか。 非人物の不審な動きに常に目をつけていた茜はテレビでとあるニュースを見る。 この世界のテレビは報道施設に人が集まって近況を話して運営されている。常連もいて概ね賑わいを見せる。
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