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厭われた子
これはクロウとテイが出逢った頃の話である。
この街の色も一回りも二回りも違った別の時代、クロウはダサいデザインの窓の木造建築に待機していた。
そこはちょっとした相談所のような場所だ。
クロウの脇に構えているのはテイと名付けた獣(狼)で前から飼い続けていて、それなりにクロウを認識した忠実な獣だと信じていたが、会話などで意思疎通ができないのでクロウ自身から一方的に天然だと思い込んでいた。しかし、それでもクロウにとっては手放せない大切な存在である。
ある日、クロウは遠出をして数日間、獣(狼)がいる家へ帰ってこなかった。
寂しげに主人を待つテイは開けられるはずのない扉を開けてクロウを探しに外へ飛び出した。
……
クロウが帰宅すると、そこには獣(狼)の姿はない、クロウは慌てて家を後にして、あちこち探し回る。
しかし、街中にはいないようだ。
あと探していない場所は人工森林だけだ。広大な土地に隙間なく低木樹林が植えられていて葉は、ちょうどクロウの頭頂部ぐらいの高さに伸びる。
樹林の密度が高く、昼間でも木の下は薄暗くなっている。夜であればますます暗くなる。
そんな人工森林の中で不規則に並んだ幹をかわしながら広大な土地の奥へと突き進む。
散々探し回り、夜も更けた頃。クロウは今までにないほど必至な思いで辺りを廻ると、ふと不自然な窪みを見つける。
窪みの奥には小さな少女が蹲っていた。
クロウ「あなたは?」
「…」
クロウ「…」
「テイ…」
クロウ「テイ?…そうかお前はテイか」
そうして、その少女の正体が何なのか改めて気に留めて話す事なく、互いに以心伝心して過去に迫らずに仲良く一緒に生活することになる。
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