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翌日、この平行世界で言う首都に近い場所、中央街を訪れると、何時もならよく姿を現すはずの旅人や冒険者が全く街中にいない。
一体クロウの街に何があったのか、
そして、よくよく探し回ると、テイや茶豆も姿を消したことに気づく。テイと茶豆はもう少しあの一軒家に泊まっていきたいと言うのでクロウは先に帰ることにしたのだが、それっきり、その一軒家を見返してみても全く姿がない。あのテイに何かあったのか、姿を現さなくなった外来人より先にその事に執着していた。
…
シロウ「やったのは私だ」
クロウ「お前は…」
シロウ「私はシロウ、魔導師だ。それもとびきり強いな」
シロウと名乗る謎の人物は突然クロウの前へ現れ、こう言う。
彼の魔法により一切周りからの流通を消し、そして孤独の絶望を味あわせて地獄に堕とす。
一体何があってこんなことをするのか。
シロウ「まさか、こんな生活が当たり前かと思っているのか?、誰も頼らず、誰の人も借りずに生活してるなんてな!」
クロウ「いや、それは技術があるから…」
シロウ「そんな摩訶不思議なものは祟られるぞ」
クロウ「摩訶不思議も何も私の生活は現実味があるから…」
シロウ「それが気にくわないのだ、だからお前の世界を奪おうと思ったのだ」
クロウ「もうどうでもいいから元に戻せ」
シロウ「ふん、それはいかんな、そもそも私に意識を向けるな、愚か者め。そのまま永遠の孤独でいるがいい!」
クロウ「?」
そう言うと、シロウは脚取りなく姿を消した。そしてクロウはさっきの出来事を忘れる。
そう思えば私はこの世界で派手に開拓をしすぎた、そのせいで大切な何かを引き換えに余命を与えられる始末に至る。ただでさえ過去の「悪霊」の問題を引きずっているのに次々と…
これは一体何かを私に伝えようとしているのか。
皮肉にも刻一刻と終焉が迫る気がしてただならない。
何か、考えるたびに雑念が増えてくる、「流通の閉鎖」「途絶えた可能性」
そのとき悟った、「無」だって自身で構築していくものだと、「無」…そんなんで手は伸ばせない。虚無感が人を崩壊させ、創造物が次々とおかしくなってゆく。
シロウ「そうだ、それがお前の答えだ」
クロウ「…」
クロウは地べたに寝転がっていた。
クロウ「…まさか!、まさか、この世界が治ったのか!」
シロウ「いや、強欲だな、何処まで張り詰めていたんだお前は…」
シロウ「そう、始まりさえ知ってしまえばこの狂いに狂った世界は元に戻る、時間を重ねるたびに徐々に穢れを蓄積させていったのだろう」
クロウ「よかった…(安堵)」
本当のシロウの目的は、この世界の矛盾を搔き消すことだった。シロウ、彼はクロウの裏の姿のようなもの。クロウが困っていれば放っておけなかったのだろう。
しかし、シロウの魔法でこの世界を直せはするものの、あと一歩クロウの力が必要だった。それは科学力ではなく。
こうして、平行世界の穢れが消し去られ再びクロウの世界に安寧が訪れた。
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