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一方上のフロアで作業するクロウは
テイ「久しぶりに新しい開発を行うって聞いたので来ちゃいました」
テイ「……。何をそんなに悩んでるの?」
クロウ「うーん、また生産ラインがいっぱいになったのか…」
テイ「アホみたいに生産ラインを増やすからだよ(呆れ)」
クロウ「仕方がない、ちょっと見に行ってくるからGTの増設はその後だ」
そして、夜景を背後にクロウはビルから飛び降りる。
~マター製造ライン~
マター(物質)はあらゆる物質に変化させることができる究極の物質。その物質を錬金術を用いて変化させ、万物を作り出す技術がこの生産ラインにはある。
クロウ「不変の呪いのせいで長らく放置されていたが、まさか、ここに来て使うことになるとは思いもしなかった…」
クロウはこのまま呪縛を受けたままずっと変わらないと確信していた。まさか、今までの因果を覆すような事があるとは予想もしなかった。
複雑に入り組んだ工業ビルをすり抜けていくクロウ。すると、何やらこのビルに迷い込んだ様子の人を発見する。
近づいいてみると、その人はミルだった、
ミル「やっぱりここに来るのね」
クロウ「ちょ…何処から入ったの?」
ミル「そんなことより、あなたに報告があるわ」
クロウ「?」
ミル「この世界を縛る呪縛は確かに無くなった。がしかし、そこで安心はできないわ」
クロウ「え、どういうこと…」
ミル「呪縛は一時的に遠退いただけであって、まだ貴方の呪縛への戦いは終わってないのよ」
クロウ「でも、さっき無くなったって…」
ミル「それは貴方次第ね、それを告げるために来たんだ」
クロウ「?」
ミル「時計には分を刻む針と、時間を刻む針がある。それと同じように、貴方がこの世界で呪縛で封印されると今まで使っていた「分」が消耗され、その「分」が0になると「時間」が消耗され繰り下がる、今ある平行世界の状況はこんな感じ」
クロウ「それは一体…」
ミル「まあ、簡単に要約すると、あなたの猶予が1から桁が一つ上がったようなものね」
ミル「そして、それに伴ってあなたは二つの平行世界を行き来しなければならない」
ミル「二つの平行世界はお互いに釣り合っている、そこで片方の平行世界が封印されればもう片方の平行世界に行き、封印された平行世界を浄化する。こうする事により半永久的にあなたの平行世界は猶予が与えられる」
クロウ「つまりは、定期的にもう一つの平行世界へ行けばいいということだな?」
ミル「もう一つの平行世界へのゲートは私が作ったわ、それを使って毎日通いなさい…」
クロウ「ふーん、それはどうも…。これって感謝していいんだよね?」
ミル「感謝なんか要らないわ、私は本来ならばこんな他世界に触れない人間だからね」
クロウ「あ…そう…」
【平行世界の猶予 ”8”
第二の平行世界の猶予 ”8” 】
事実を歪める魔女「メイヨーク・ウマウントミル」、彼女は次元の狭間を彷徨っていた。穏やかな眠りにつき、世界に行き着くのを待って…
雲を突き抜けて、風を切り裂き、地上へ出向いたミル。そっと原っぱに足を添える。
ネメシスの神話では、人のふとした思い上がりの罰として、人々が兎や猫などの動物の姿に変えられ、地上に人間のような英知を持つ者はいなくなったそう。
罰…。任意の目線から見てみれば容易に考えられる。英知を持つ人間が、必死に食べ物を探す動物を差し置いて遊んでいるのだから。
異世界の人間であるミルはそう感じてただならない。
ミルが最初に訪れたのはとある観戦場、丁度何かの試合中であった。
観客の視線が舞台に集中している中、ミルは突然、試合中に間を割って入る。
どうやら相手を場外に出すと勝ちになる試合らしい。
ミル「運命のディストーション!」
審判「おい!、何を…」
その瞬間、片方の選手が跡形もなく消える。
ミル「こんな玩具が何の役に立つの?」
観客「(何が起きているんだ…)」
ミル「誰でもいいから私を場外に出してみなさい、それであなたたちの運命が決まる」
審判「…。とにかくあいつを場外へ出させるんだ(耳打ち)」
すると、次々とミルに人々が詰め寄る。ミルは赤い閃光を放つと、一瞬で姿を消す。
観戦場にいる人間たちは皆、ミルの魔法で小動物と化した。
ミルはカメラの前で訴えだす。
ミル「PCを前にピザむしゃむしゃ食ってる人たちよ、見ているか?」
ミル「ドブ川飲んでいるくらいなら自然に帰りたまえ」
視聴者「え?これって放送事故…」
……
暫く街中をウロついているミル、太った男性に変装し、酒屋帰りの男性たちに絡んで知らぬ間に友達になる。勿論、全くの赤の他人である。
男性「お前、名前なんて言うんだ?」
ミル「ミル」
男性「え、それって本名?」
ミル「一応、オネエでやらせていただいてます」
男性「へー、それで、何か仕事やってんの?」
ミル「いや、何も」
男性「そうか…」
……
男性「ちょ、何処まで付いてくるんだよ…」
ミル「そうですか、それでは失礼します」
男性「(一体何だったんだ)」
男性「(そういえば、今日はテレビの取材を受けたんだったな、帰って確認するか。それと、途中から絡んできたあの太った人も映ってるかな)」
男性は帰って寝付くとPCをいじり出す。
ミル「ふーん、最近流行ってるのってこれか」
男性「ファッ!?」
ミル「ちょっと弄りに行ってみようか…」
すると、ミルは太った男性から通常の見た目に戻る。
男性「ちょっと!、勝手に人の家入らないでくれ」
ミル「悪い、どうしても気になることがあってね、ちょっとだけ検索の履歴見せてくれないかな?」
男性「いや、というかあんた誰すか、さっきの人は何処へ行ったんだ…」
ミル「あなた、ちょっと錯乱してない?、私はミルだよ」
男性「まあ、いいが、家から出ていってくれ」
ミル「ちょっと、履歴見たいだけだから、いいよね?」
男性「…無理に決まってるだろ」
そうしてミルはその家を立ち去るが、翌日になると今まで男性が利用していたサービスが利用できなくなっていた。
男性「これは…」
男性「そういや、あの女性は一体誰だったんだ…。黒装束っぽかったな。何か朝から調子が悪い気がする、何か楽しみがこの後も立て続けに消されるような…」
ニュース「動画共有サービス○○○が運営停止、相次ぐ問題動画の投稿により凍結」
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