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理想郷にはまだ遠い
【クロウの平行世界への人類繁栄計画】
クロウは自身の平行世界の淋しさを払拭しようと、現世から人間を呼び込んで空の街を栄えさせようとした。
早速、現世に置かれている拠点で作成したチラシで勧誘を行おうと「旅行会社」を名乗って最寄駅で配っていた。
運営もクロウのみで全て行われる。それは圧倒的な物量生産を司るクロウが現世と経済的な関わりを持つと現世の環境が崩壊するからだ。
勿論、勧誘の手伝いをする人を招集しようとしたが、タダ働きなので集まらない。
普段からこんなボロ雑巾みたいな生活をしていないので、クロウにとってはかなりの苦痛である。しかも勧誘は毎日行う。
すると始めてから3日、ついにクロウの拠点に客が訪ねに来た。
それは暇を持て余してそうな老夫婦だった。
「タダ?そんなのあるわけ」
クロウ「別の事業と平行して行われているので、それでたまたま余ったものを利用して運営しているだけです」
「運営しているのはあなたの他に誰がいますか?」
クロウ「いいえ、私だけです」
「んなのあるかよ!こんなの詐欺に決まっている」
クロウ「そんなことありませんよ、私は何も取りません、時間以外」
老夫婦は意味深に疑うが、チラシやブログに載った観光地の写真を見て、気を良くして旅行に乗り出た。
「それで…ここはどこなんだ?」
客はパソコンの画面を指差して場所を伺う。
クロウ「それはお答えできません」
「どうして?」
クロウ「環境保持の都合で場所は伏せさせていただきます」
「ふーん」
………
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