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実を言うと、平行世界に人を勧誘したのはこれが初めてではない。
幾年も前、現世の俘虜の死者を呼び込む転生装置を開発して、複数の若い男女を転生させて平行世界に呼び込んだ。
これこそが、クロウの平行世界の人類創造の始まりだった。
この平行世界に転生した人たちには、住まい、や生活の物資などを用意して徹底された安全管理のもとで暮らさせていた。しかし、この安寧の生活にたどり着くまで様々な苦労があった。
異世界転生に成功した人々はクロウの元で培養槽から出される。
クロウ「転生おめでとう」
茜「え?は?」
茜は動きを拘束されていた状態から解き放たれ、辺りを伺う。
そしてクロウは安否を確認すると、すっと暗闇に姿を消した。それを見て茜は慌てて立ち上がるも体に力が入らない、再び地面に伏せて萎える。
しばらくすると萎えた体も回復したので、辺りを散策する。周りには何もなく無機質な壁で覆われている、壁を掌でたどると出口らしき場所を発見し、外を見渡してそっと外へ出た。
茜「(広いな…地下室か何かなのかな?)」
元いた部屋から出ても同じような光景が広がる。物音ひとつない静かな廊下を歩くと、聞こえるのは自分の動悸。
思い返してみれば、捕虜にされていた頃、なんとか施設から抜け出して鬱蒼と茂る森らしき場所を駆け抜けていた。廊下を歩くとその時の記憶が蘇ってくる。
しかし、廊下の突き当たりに合うとその記憶は瞬く間に消えた。
茜「(こっちかな…)」
分岐した廊下を幾度も通り、外らしき場所を発見する。しかし、外は自身の身長を遥かに超える高さにあり、まともに届く高さではない。そこはたくさんの飛行機や船が縦に並べられていて、まるで地下ドックのような部屋だった。外は明るいようだ。
仕方なく、その部屋を後にする。
しかし、あの青年(?)は誰だったのだろうか、「転生おめでとう」
転生とは何なのか、色々疑問視していき、一度死んでこの世界に蘇ったのかと自己解釈した。
それならこの世界は一体何なのか、さっき外の光を見た通り地上や自然が存在するのか。そんなことを考えながら出口を探っているととある石垣の部屋を発見する。
茜「(この階段を登れば…)」
登りの階段を見上げるとそこは外だった。
茜「(…誰かいる、人?人じゃないみたい)」
茜は階段の外壁の陰に隠れて外を伺う、すると階段の前へ誰かが横断し、咄嗟に身を隠す。
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