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公園のジャングルジムの一番上で月を見ていたら、声をかけられた。
「ガキ、そこから飛べるのか?」
和真は下を見て、そこに堀之内家の門番が立っているのを見た。手に茶色の封筒を持っている。
「飛べるけど」和真は普通に下に降りた。
「飛べよ、こういう場合は」
「あ、すみません」和真はもう一度上に行こうとして門番に止められた。別にそこまでしなくていい。
「お嬢さんからだ」
と、封筒を出され、和真はそれをじっと見た。受け取り、中を改める。
「読めない」和真はつぶやいた。書類は漢字がたくさん並んでいて全く意味がわからない。
「おまえが読める必要はない。おまえは結果を知ってるだろうが。おまえの実父が滝川秀輔だって証明しただけの話だ」
和真は深くため息をついた。するとボカッと殴られた。地面に倒れるぐらい強かったので、続いて殴り続けられるのかと思ったぐらいだ。恐れながら門番を見ると、門番は殴った拳が痛かったようで、手首を振っていた。
「根性出せ。おまえはいいものをいっぱい持ってるのに、根性だけが足りない」
門番は苛立つように言った。
「すみません」和真は倒れたまま、門番を見上げた。
「てめぇの父親が人を傷つけた理由も知ろうとしない。母親がおまえを預けた理由も知ろうとしない。逃げてばっかいるんじゃねぇぞ。先代も、先代の娘さんも天国で泣いてらぁ」
和真はもう一度頭を下げた。「すみません」
ポカリともう一度、頭を殴られたが、今度はとても軽い拳だった。
「別に怒ってない」
少しだけ優しい声になって門番は言った。
礼拝堂の十字架を見ていると、ため息が出た。
カチッと電気をつける音がして、和真は後ろを振り返った。書類を持った父が入ってくる。
「またここにいたのか」父が言って、和真は椅子の横に置いてある封筒に手を置いた。
良輔はそれを見たが何も言わず、自分の書類のために礼拝堂の棚の本を確かめる。そしてその作業を黙って五分ほど続けた。その間、和真は何も言って来なかった。
ファイルを閉じ、良輔は和真を振り返った。寝てるんじゃないかと思って。だが寝ていなかった。ぼうっと目の前の十字架を見ているだけだ。
「悩んでるなら、聞こう」
良輔は和真に声をかけた。距離は縮めない。和真がそれを警戒するのがわかっているから。
和真は顔を横に向け、良輔を見た。言いたいことがある目だった。良輔は微笑んだ。
「何だろう」
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