第7章 鮭の産地は気をつけて

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 首をかしげるミズキに、ユキは前足で土の山を指した。そこには、ユキを助けるために投げたカバンが転がっている。 「符。お前、どこに貼っていた?」 「あ」  充電されたフランケンシュタインのように、ゆらっとニセ者が立ち上がった。 「ちょっと梨理!」  今だにぼーっとしている梨理の両肩をつかんでゆさぶる。 「いい加減にしなさい! もう十分でしょ! やめなさい、ってか、やめてくださいお願いしますってかでないと殺す!」 「お願いしてるのか脅しているのかどっちだ」  ユキが突っ込んでいる間に、ニセミズキは閉じていたまぶたを開いた。死んだ魚のように濁った目に、輝きが復活する。 「ヤバイ! 来た来た来た来た!」  恐怖のせいで涙がにじんで、ニセ者の姿がにじんだ。ミズキは放り投げたカバンに向かってダッシュした。もちろん、「それが当然の義務です」とばかりにニセミズキは追ってくる。 「お返しだ、ミズキ。助けてやろう。いい加減、お前達の追いかけっこも見飽きたことだしな」  ユキは、前足で頬についた土を落とす。 「人形女。ミズキのニセ者よ。お前が殺したいのは、本当にミズキなのか?」 「え?」  しゃべらないニセミズキの変わりに、梨理が聞き返す。  ニセミズキの手が、石畳に食い込んだ。さっきからの騒ぎで、社殿の前は月面上みたいに穴だらけになっていた。     
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