7人が本棚に入れています
本棚に追加
首をかしげるミズキに、ユキは前足で土の山を指した。そこには、ユキを助けるために投げたカバンが転がっている。
「符。お前、どこに貼っていた?」
「あ」
充電されたフランケンシュタインのように、ゆらっとニセ者が立ち上がった。
「ちょっと梨理!」
今だにぼーっとしている梨理の両肩をつかんでゆさぶる。
「いい加減にしなさい! もう十分でしょ! やめなさい、ってか、やめてくださいお願いしますってかでないと殺す!」
「お願いしてるのか脅しているのかどっちだ」
ユキが突っ込んでいる間に、ニセミズキは閉じていたまぶたを開いた。死んだ魚のように濁った目に、輝きが復活する。
「ヤバイ! 来た来た来た来た!」
恐怖のせいで涙がにじんで、ニセ者の姿がにじんだ。ミズキは放り投げたカバンに向かってダッシュした。もちろん、「それが当然の義務です」とばかりにニセミズキは追ってくる。
「お返しだ、ミズキ。助けてやろう。いい加減、お前達の追いかけっこも見飽きたことだしな」
ユキは、前足で頬についた土を落とす。
「人形女。ミズキのニセ者よ。お前が殺したいのは、本当にミズキなのか?」
「え?」
しゃべらないニセミズキの変わりに、梨理が聞き返す。
ニセミズキの手が、石畳に食い込んだ。さっきからの騒ぎで、社殿の前は月面上みたいに穴だらけになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!