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「ほら、またはずれた。呪いで造られた人形が、たかが人間にここまで手こずるはずはないのだが」
梨理は、長いまつげをパチパチした。
ミズキはゼーゼーと息を切らせて走る。さっきから炎天下で動きぱなしだ。高校球児だって脱水症状で死んでもおかしくない。
だんだん足が上がらなくなってきた。自分の右足につまずいてスッ転ぶ。
「ひいい!」
ニセ者の拳は、寝っころがったミズキの頭から二十センチ横にめり込んだ。
「ずっと見ていてわかった。お前は、本当にミズキを殺したいとは思っていない」
「なにを……」
またしても電気が切れました、というようにニセ者の動きが止まった。と、思ったら、なんだか悪い発作でも起こしたかのようにブルブル震えだす。
「あの、もしもし? なんで止まったの?」
呟いたとき、ミズキは思い出した。『もし、ニセ者にあったら絶対に話しかけるな』。たしか、霧崎は会った時にそう言っていた。もしもどこかで呪いをかけた者がその言葉を聞いていて、心が乱れたらどうなるか分からないから、と。
つまりそれは、梨理が怒ったり喜んだりすると、その影響がニセミズキに伝わるということだろう。
「惚れた男に心を告げる事もできず、親友を呪い殺そうとするなんて、醜いな。そうは思わないか、梨理よ?」
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