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ニセ者の振るえが、ぴたりと止まった。その代わり、今度は梨理がガタガタ振るえだした。
「ミズキが妬ましかったのは、なにも静馬に好かれているからだけではあるまい、梨理。ミズキは強い。血まみれの男を支えて平気だ。霧崎を助ける必要があれば、罠と知りながら乗り込むことを恐れない」
「やめるんだユキ!」
ミズキの叫びは無視された。
ユキはゆっくりと続けた。自分の言葉が梨理の心に染み込むようにゆっくりと。
「それに比べて、お前はどうだ。私に会っても、怖いと泣き叫ぶだけ。ミズキに文句があっても言うことすら出来ず、夜中にコソコソ釘を打つのが精一杯。情けない」
「あ……」
梨理は、細い指を長い髪に突っ込み、顔を歪める。
そして、ユキは容赦なくとどめを刺した。梨理の心に。
「お前が殺したかったのは、本当にミズキか? ごまかすな。本当にお前が消したかったのは、自分自身!」
ニセ者が、にらみつける。ミズキではなく、梨理を。
その目を見て、ミズキは心底ぞっとした。今まで散々ニセミズキににらまれてきたけれ
その顔とは比べ物にならないくらい恨みがましい顔だった。こいつ、本気で梨理を殺そうとしている! 梨理は今、自分自身を責めているのだ。それこそ、殺そうとしたいくらいに。
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