第7章 鮭の産地は気をつけて

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「自己嫌悪、というのだろう、こういうの」  ニセミズキが、新しい標的にむかってかけだした。 「きゃああああ!」  新種の獣のように、梨理は悲鳴を上げた。 (昨日の夜、襲われた時は悲鳴も上げられなかったもんだけど……) 「って、そんなことに感心している場合じゃない!」  なにか、いい方法はないか。ちんたら考えているヒマはない。一か八か。ニセミズキは、梨理の心に影響を受ける。ならば!  ミズキはカバンの中に手を突っ込んだ。 「そいやあ!」  宙を舞ったのは、青い花束だった。丈夫な造花は、花びらを散らせもせず弧を描く。そして、梨理の頭と振り上げたニセミズキの手の間にすべりこむ。 「あんたの愛しい人がくれた花束よ! 恋する女の子ならぶっ壊すことなんて出来ないでしょ!」  偽者の手が止まった。花束が、パサッと落ちた。 「よっしゃ!」  唇をペロッとなめて、ミズキは本殿に駆け寄った。賽銭箱に足をかけて、思いっきり鈴の綱を引っ張る。割れなかったクス球のように、鈴は屋根から引っぱがされた。 「せいや!」  ミズキは紐をぶんまわした。石畳に叩きつけられるより先に、鈴は音を撒き散らしながら弧を描いた。     
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