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「なあ、そろそろ泣いていいか?」
走りながらしゃべっているのだろう、霧崎の声はぜいぜいしていて聞き取りにくい。
「気をつけろ! そこにニセミズキが……」
「ええ、いるわよ。スマキになってね」
「スマキ? まさかお前がやったのか」
「あたし以外にだれがいるのよ。あんたが捕まってるのに」
「お前、いい神話ハンターになれるぞ」
役に立てなかったのが気に入らないらしく、霧崎は少しすねているようだった。
「神話ハンターに? 大金積まれても嫌だわ」
そこで霧崎は少し黙り込んだ。そして、ゆっくりとためらいがちに口を開く。
「ユキは無事か?」
「もちろん。あたしのおかげでね」
「いまだにアバラが痛いがな」
ボソッとユキが突っ込んだ。
「ユキと代るわね」
ミズキはスマホをユキに差し出した。ユキはスマホを地面に置いて顔を近づける。
「霧崎。久しぶりだな」
「ユキ……」
「何でこんな事をしたのか、訊きたそうな声だな」
霧崎は黙り込んでいた。むこうからは雑踏と雑音が聞こえるばかり。
「すまない」
ようやくのことで霧崎はそれだけ言った。
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