第7章 鮭の産地は気をつけて

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「ボイン河。地理の時間、バカな男子が地図帳でたまたま見つけて大喜びしそうな地名だこと」 「今でもいるのか、そういう奴。俺の時代も…… て、そんな事はどうでもいい。とにかく……」  霧崎は、食べただけで知恵をさずかるサケの伝説を、簡単にサッと教えてくれた。 「なるほど。私が食べたのはその鮭の末裔か。前にもまして頭がよくなったのはそのおかげ」  聞き耳を立てていたユキもさすがに驚いたらしい。目と口を少し大きめに開けた。 「まさか呪い見物しながら枝の上で食べた魚にそんな効能があるとは思わなかったぞ」 「じゃあ、藁人形が人間の姿になったのも、その魚のせい?」  ユキの頭がよくなったのはわかった。けど、いくら頭がよくなったからといって、ワラの束が肉になるのは納得いかない。特殊相対性理論を研究するワラ人形が生まれるのならまだしも。  今まで暴れていたせいで、境内は砂埃がひどい。ミズキは頬っぺたにたれた汗をふくついでに、口元を袖で押さえた。 「というより、牛の刻参りのほうが問題だろう」  電波の悪い所にいるのか、ザザッと霧崎の声がひび割れる。     
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