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「ただの束ねた植物の茎を人形にして、さらに髪の毛を入れ込んだり、胴に名前を書いたりするのは、なるべく呪う人間に近づけるための儀式だからな。その力と、鮭の魔力。その二つが重なって、ああなったんだ」
「ふうん、そうなんだ。て、待て待て待て。さっき、なんだかユキが聞き捨てならない事を言っていたような気がするぞ?」
ミズキは、眉間に指先を当てて考え込んだ。
夏なのに、変に肌寒い風が吹いた。
「ユキ、枝の上で鮭を食べたのよね。そして、脂と食べカスがワラ人形にかかったと」
「そういうことだが」
「当然、木の幹にもつくわよね。食べカス」
のしかかる重みに、何とか耐えていたお稲荷さんの柱がバッキリ折れたらしい。土砂の山の一部が、見えない怪獣に踏み潰されたようにボコッと潰れた。
「じゃあ、その木も知恵がつかないと不公平なんじゃないの?」
「あ」
霧崎が息を飲んだのが、スマホ越しに伝わった。
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