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辺りを見渡しても、机には一冊のノートとシャープペンと消しゴムが置いてあるのみだった。
あの事件から20年が経っていた。
雅彦は逮捕され起訴されて懲役14年を言い渡され、無事に刑期を迎え出所し、薬物依存症がいるグループホームにいた。
雅彦は刑務所に入って、ようやく櫻井優子をこの手で殺めてしまったことに気がついた。
それでも優子は脳裏に焼き付いていて、未だに幻影として現れたり夢にも出てきては雅彦を苦しめていた。
雅彦は手を伸ばしていると、部屋をノックする音がした。
「……はい」と元気なく返事をすると、看護師の向笠義隆が入ってきた。
「朝食のお時間ですよー♪」と言い、雅彦を起こした。
雅彦は朝食を食べる気力もなかったが、起き上がるとバイタルチェックが始まった。
「血圧は127/68、脈拍は76の…」と義隆が言ったと同時にピピピッと体温計が鳴ると、雅彦は体温計を差し出した。
「ありがとうございます♪おっ。36.7℃か…いい感じですね♪」と笑顔で言うとファイルを広げ、先程のデータを書いていた。
雅彦はお辞儀をし立ち上がると、歯を磨いて顔も洗うと食堂へと向かった。
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