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雅彦は誰とも関わりたくなかったから、端っこの方でいつもご飯を食べていた。
両親からも親友だと思っていた橋本潮にも見放され、すっかり人間不信になっていた。
ただ、たまに来る兄の剛士とその奥さんは着替えや必要な物品を届けに来てくれたり、話し相手となってくれたり来てくれていたから、少しずつではあるが心を開いていたが、優子の幻影や夢に出てきたりまだ未練があるということは言えないでいた。
朝食を食べていると、向笠と数人の看護師が集まってきた。
「はい皆さん、おはようございます!今日は4月7日の土曜日!今日から、新しい看護師が働くことになりました!どうぞー♪」と言い、拍手をしていると恥ずかしそうに一人の女性がやって来た。
雅彦は興味がなかったが、その看護師を見ていると「今日から働くことになりました、塚原清美です!よろしくお願いしますっ!」と言い、深々とお辞儀をすると満面の笑顔で顔を上げ、雅彦と目が合うと優しく微笑んだ。
「優子…?」と思い、胸が苦しくなった。
清美は、どことなく優子に顔と雰囲気が似ていた。
雅彦は胸が苦しくなり泣いていると、清美が近付いてきた。「どうかしましたか?私、何か変なこと言ったかな?」と言い、ハンカチで雅彦の涙を拭っていると「大丈夫だよ…ありがとう…」と笑顔で言い、清美の頭を撫でると立ち上がり、フラフラと部屋へと戻っていった。
清美が心配していると、同じ入居者の守屋修がやってきた。
「奴のことは気にすんな」と言うと、清美の肩を叩いた。
清美は雅彦の食事と水分量を確認すると、メモを取って義隆の方へと近寄り、説明を受けながら記録帳に先程のメモを書いていた。
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