丈二の隣人

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丈二の隣人

早朝6時。 「ただいまーっと」 チュンチュンというスズメのさえずりと一緒に、丈二が帰ってきた。 住人の人数を超えた靴を退け、できた隙間に靴を脱ぎ、ひっそりとした冷たい床に足をのせる。 丈二は、ここから徒歩で30分ほど南に行くとぶつかる飲み屋街、伊勢崎一丁目に佇む『スナックオペラ座』でバーテンをしている。 定休日はなく、毎日夜8時から朝5時までが丈二のシフトである。 「腹減ったなぁ。飯食ってから寝るか」 出かける前にタイマーでセットしておいた炊飯器からは、ホカホカと湯気が上がっていた。 水を張った鍋に火をかけ、冷蔵庫を開ける。 昨日買っておいたネギとナメコと豆腐を取り出し、鍋には粉末の出汁の素を入れる。 トントントン、と軽快にネギを刻み、沸騰した頃合で出しておいたナメコ、手でちぎった豆腐、刻んだネギを遠慮なく入れていく。 「あとは、味噌だけだな」 ひとりごちて、その間に卵を4個取り出し丼に割った。 砂糖を少々加え醤油を垂らし、かき混ぜたものをフライパンへ一気にぶちまける。 柔らかいうちに箸で形を整え、固まってきたら端に寄せ、くるっと丸める。 いつもの手順で、卵焼きを完成させ皿に乗せたら、沸騰した鍋の火を止め、味噌を投入。 炊飯器を開け中身をほぐし、先ほど卵を割った丼に白米を盛る。 引き出しから味のりと梅干しをテーブルに出し、朝食の完成だ。 「とっとと食って、はよ寝よ」 いただきますの代わりにそうボヤいて箸を持ち上げた時、いきなり玄関のドアが勢いよく開いた。
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