マリア

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洗濯機の隣に置いてある大型のランドリーボックスには、男臭が充満したシャツや靴下で山盛りになっていた。 左右の取ってを掴み上げて勢いよく逆さまにし、洗濯機に投げ入れる。 ゴム手袋を買っておかなきゃ、こんなの触ったらあたしまで腐りそう! 液体洗剤をぐるっと一周垂れ流して、急いで蓋を閉め、すぐにスタートボタンを押した。 洗濯機はゴーッゴ、ゴーッゴと回りながら、その中身の重さを確認している。 動きが止まると、クイズの答えを発表するみたいに、重さを示す赤いランプがマックスの7キロを示した。 洗濯係が留守にしていたからって、よくもまあ、これだけ溜め込んだものだ、と呆れると同時に関心してしまう。 水道の蛇口がかすかに震え、水が勢いよく出てくる音を聞くと、なんだか汚れが落とされていく安心感に包まれる。 マリアは、やっと止めていた息を吐き出した、と同時に吸い込んだ。 「あ!ヤダッ! あたしの洗濯物、分ければよかった!」 出かける前に、ボックスに投げ入れた自分の下着一式を思い出し、マリアは絶望的な気持ちになった。 オーナーの高橋杏里は、住人3人にこう言った。 『あんたちはこれから共同生活するのよ。料理、掃除、洗濯、それぞれ役割分担しなさい。追い出されたくなかったら、自分の役目はきちんと行うこと。これが条件よ』 40にもなれば、誰も女と見やしない。ましてや、一郎なんてまだ21才。ヤンキーなら自分の子供でもおかしくない。 とはいえ、男に自分の下着を洗わせるほど、女を捨てたわけじゃない。 洗濯係になったのは、まだ女というステージから降りるつもりはない、マリアなりの決意の表れだった。 「あたし、こんなところで何してるんだろ」 時間は待ってくれない。ここで年ばっか食っていくのだろうか。 洗濯機に寄りかかり、大きなため息を吐くマリアだった。
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