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俺が臼田紫帆の存在を意識する様になったのは、新人研修が始まってたった三日目の事だった。
その日、研修センターではコミュニケーション力の講習が行われていた。
手書きの自己紹介カードを作り、東北・北海道ブロックから集まった新入社員約80名でまずは各々交流。
その後、カードに相手のプラス面、マイナス面を箇条書きにして渡すことで自らを客観視する、というものだった。
「なぁなぁー。ぶっちゃけ、この中でなら誰がタイプなんだよー。お前らー」
休憩中、前の席に座っていた男が、学生気分の抜け切らない、間延びした口調で聞いてきた。
山口慎一、ちょいと太っちょで、笑うと目が無くなる。クラスでいうならムードメーカー。馬鹿みたいに明るい奴だった。
「そんな……会ったばかりでタイプも何も無いよ……。な、神谷」
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