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その時、ふと、染々と話す古賀の視線の先がどこにあるのか気になった。
彼女と表したシロを見ていたのか、中学の同級生だという杉本を見ていたのか……。
それとも、窓の外に見える桜並木に意識をそらしていただけか……。
俺は未だに、わからないままだ。
「さっきの交流の時間もチャンスだと思ったんだけどよ……。恥ずかしながら、勇気が出ませんでした……」
「そりゃあ、最初からグイグイ行ったら嫌われっ……あ、いいこと思い付いた」
俺は背中を丸めて落ち込む山口の肩を叩き、任せろ、と言って席を立った。
迷うことなく向かった場所は勿論、シロのいる席。
「……臼田さん。ちょっと、いい?」
「……ん?」
振り向いたシロの無意識の上目遣いは、なんとも卑怯な先制攻撃として俺のど真ん中にヒットした。
長い睫毛をパチパチと瞬かせながら、小首を傾げた彼女の顔は、間近で見るとめちゃくちゃ小さくて……。
それが余計に『異性』を意識させた。
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