【その後】

4/10
9631人が本棚に入れています
本棚に追加
/289ページ
 その後、お風呂に入り、食事をして、やっとゆっくり出来るかと思ったら再び発情……。 「ふあっ……」  日付の変わった12時過ぎ。ルームウェアに着替えた神谷が、呑気にアクビする様子をにらみつけながら私は小さく吠えた。 「もおーー。バカミヤ!予定全部狂ったじゃんか」 「ええ……予定?何かあった?」 「本当はご飯食べてから実家行こうと思ってたのに。お姉ちゃん所……二人目出来たんだってさ。龍之介さんが一人ではしゃいでるから、相手しに来てやってくれって」 「うわあ……。予定狂って良かったー……」  ポロっと本音を溢す神谷を更に睨む。 「それだけじゃない。朝ご飯の買い物と、DVDだって借りに行きたかったのに」 「ははっ。何んだよ、それ。そんなのいつでも出来んじゃん」 「いつでも出来ないから言ってるの!こっちは……会えない間にいっぱいいっぱい一緒にしたい事リスト考えて……」  会える時間が限られているからこそ、特別じゃない、当たり前の日常を当たり前に過ごしてみたい。  『普通』が一番羨ましいと思ってしまうのはおかしい事かな。 「ごめん。怒るなよ……」  そう言って神谷は、ベッドに寄りかかっていた私を後ろから抱き締めた。  ふわりと香るのは、同じシャンプーの匂い。 「全部、明日やろ?な?」 「明日は実家帰らなきゃでしょ?お母さんも楽しみにしてるだろうし」 「ああ……じゃあ、それもリストに入れておいて。シロの誕生日も仕事が入って一緒にいられなかったしな……。明日は何でも言うこと聞くよ」 「本当……?」 「本当。だから機嫌直して下さい」 「そこまで言うなら……いいよ」  にんまり微笑んで頷きを返す。  本気で怒っていた訳じゃないけれど、わざわざ向こうから言い出してくれたんだもん……。  こんなチャンス使わない手はないよね。
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!