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「こんな物で良かったの……?」
「十分だよ。すげえ美味い。あ、味噌汁お代わり」
神谷のご機嫌直しに必要だった物は、冷蔵庫の余り物で作った野菜炒めと、キンピラとトーフとワカメのお味噌汁、そして白米だった。
お味噌汁をよそい、もりもりと白米を掻き込む神谷の前に差し出す。
清々しい程の食べっぷりに、なんだか拍子抜けだ。
「美味しそうに食べてくれるね」
「人が作ってくれた飯は、何でも美味い」
「……そっか」
思春期の頃を片親で育てられたという神谷は、もしかしたら家庭の味っていうものに飢えているのかもしれない。
母性本能くすぐられるって、こういう事を言うのかな……。
「神谷って食べ物は何が一番好きなの?」
「和食」
「へえ……。あっ……。べ、別にまた作ってあげようなんて思ってないんだからね」
「いや、何にも言ってねえだろ」
食事を終え、洗い物を片付け終わった後、一息ついた私はふと気になった。
さも自宅の様にテレビを見てくつろいでいる彼が、一体いつ帰宅するのだろうかと。
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