【1】ライバルとの過ち

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「はい。臼田です。お疲れ様です……。はい、はい……。林堂店の、ヘルプ……。わかりました、直ぐに」  ボス(直属の上司)との電話を終えた私は、報告書を作成する手を止め、パソコン画面を無感情のまま見詰めていた。  今朝の衝撃的な目覚めから2時間後。  いくら仕事に私情を挟むべきでないと理解はしていても、この短時間で頭を切り替えるのはさすがに無理があった。  時折響くコール音、フロア内を歩く同僚達の足音、打ち合わせに談笑する声。  全ての雑音の中央にいるのに、なんだか遠くの出来事に感じてならない。  多大なストレスを追った時、人の脳には現実逃避をするという優れた機能があるらしい。  私は今、それを無意識の内にやってのけている。 
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